
昨日の日経新聞朝刊総合面より。法相の諮問機関である法制審議会は、契約ルールを定める債権関係規定(債権法)の民法改正要綱案をまとめたとの記事。1896年(明治29年)の制定以来初の抜本改定で、消費者保護に軸足を置く約款に関する規定の新設、実勢に合わない法定利率の引き下げと定期的見直し、経営者以外の第三者による連帯保証制度の制限、短期消滅時効を5年に統一することなどが主なポイント。インターネットの普及など時代の変化に合わせてというのは分かるが、遅すぎるって。
そもそも現行民法は江戸時代末期に列強各国と結んだ不平等条約を改正する必要に迫られ、大慌てで法治国家の体制を整備すべく明治政府がフランス法やドイツ法を真似て制定したという代物(しろもの)。そういう携帯電話もインターネットも無い前時代の代物がほとんどカタチを変えず120年も使われていること自体がまず驚き。次に、専門家の間では喧々諤々の議論がありながら、世間一般的にはほとんど話題にもならないという不思議さ(先ほど昼のテレビのニュースショーではやっていたが・・)。憲法改正なんていうとこぞって感情論的な大騒ぎになるのに!
結局のところ政治家もマスコミも市民も憲法改正は政治マターとして騒ぐべきものであるが、債権法に関する議論は専門家に委ねるものという認識なのでしょう。片や専門家たる法曹界も精緻な解釈論に基づく体系と膨大な判例の蓄積が実務に定着しているとして改正には消極的。法律を法律家のものとするある意味既得権。その為に経済活動の基本ルールを決める重要な法律でありながら、実際はその法律を読んでもその基本的ルールは理解出来ないという世界に陥っている。肝心なところは法律の条文の外にあるのですから。そんな認識のままでヨシとしていたら日本経済の行く末が見えてくる。
明治政府が民法制定にあたりナポレオン法典(フランス民法典)を原点の一つとしたのは広く知られる話。また、彼の地フランスも日本と同じく法律家の数が少ないことで知られています。それでも市民生活に特段の支障が無いのは、ナポレオン法典が明瞭簡潔な模範的フランス語で書かれていて、法律の専門家以外の一般市民の誰が読んでも理解が出来るからと云われています。文豪スタンダールがナポレオン法典を愛読し筆写し自身の文章を磨く糧としたというのも有名な話。
翻って我が国の民法は?悪文の見本たる悪文中の悪文。民法に限らず日本の法律というものはことごとく然り。その彼我の差たるや!法律というものは、法律家が自己満足に弄ぶ代物ではなく、まずは市民の誰もが理解出来る日本語で表現すること。美しく模範的な日本語であるなら尚のこと良し。それを切に望む。民法改正にかかる各論以前の話。しかし、それも実は本質なのでは?