内田樹「日本辺境論」
最近、テレビを見ていると日本人や日本文化を自画自賛する番組が増えていると思いませんか?Jリーグには無関心なくせにサッカー日本代表の妙な人気なんかにしても然り。何に対しても
帰属意識が薄い私にはとても違和感がある。そんな「ぷちナショナリズム」(この造語の提唱者本人は好きではない)的な事象に疑問を抱きながら内田樹の「日本辺境論」を読んだ。
世界標準に合わせようと卑屈にふるまう従属的・模倣的な「外向きの自己」と、洋夷を見下し我が国の世界に冠絶する卓越性を顕彰しようとする傲岸な「内向きの自己」への人格分裂。近代日本人の奇矯なふるまいを岸田秀の理論を引用して総論的に位置付ける。著者は「ぷちナショナリズム」に対して論じている訳ではないが、本書を読むとそれも日本人の辺境性で解釈出来るのかもしれません。
そんな総論より面白いのは各論です。「ロジックはいつも『被害者意識』」、「虎の威を駆る狐の意見」、「不自然なほどに態度の大きな人間」、などの章に於ける指摘は痛快。日本人がというより、そういう特有の言動を取る人が卑近なところでも数名アタマに思い浮かぶ。だよね~、いるよね~、そういう人、会社の中とかでも、と。そんな困った人たちの理屈と対応の仕方も分かります。
自他共に認めであろう博覧強記の知性を持ちながら、その断定的な物言いから「知の暴走」とも評される内田樹先生。私はその小気味良さが好きです。
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